お盆休み ナンパ

所用が夕方で終わり、ナンパがしたくなった。

まだ明るい時間のナンパなんて数年ぶりだろう。

声を数件かけてみるも、うまくいかない。
人目が気になり怯えながら声をかけていた。

こんな時は下半身がフラフラになる。
逃げ込むようにカフェに入った。

座ったカウンター席の左隣は、垢抜けない感じの女の子。

中途半端に出した太ももを横目でみて、この子だったら何とかなるかな?なんてどーしようもない事が思い浮かんだ。

視線を店外に向けると、洗練された長身の女性が目に入った。

1/3しか飲んでいないラテを置いて、店を出る。

彼女が向かった先に視線を向けるが、見失った。

行き当たりばったりな感情に嫌気がさし周囲を見渡す。

斜め後ろから歩いていた彼女と目があった。

ぐっと左足を踏み込む。

「あのっ」

足は止まったが、次の言葉は出てこない。
彼女だけでは無く、僕も首を傾げてしまった。

「急に予定があいちゃって、良ければ軽く夕飯でもどう?」

自分でもビックリする程、旧世代なナンパ文句が出てきた。
彼女はややゆっくり歩みはじめた。

「いきなりゴメン。でもお盆の夜にこのまま帰るなんて辛くない?これから予定あるの?」

相変わらず返事は無いが、また足を止めてくれた。

「軽くイタリアンあたりでどうかな?居酒屋って気分でも無いよね」

行くって言ってないと彼女は笑いながら口を開いた。

「そうなんだけど、こんな事ってない?知らない人に声をかけるとかじゃなくて、急に予定を失ってさ。なんだかそのまま帰れる気分じゃないって」

「分かりますけど別に私じゃなくて良くないですか?」

至極真っ当な答えに思わず同意してしまった。

「ほら他の人でもいいんじゃないんですか」

彼女の表情は少しづつ和らいできている。

「でも違うかな。やっぱり貴方がいい。笑顔が柔らかいから。エクボできてるし。エクボある子とイタリアって気分になってきた」

自分だってエクボある癖にと笑った彼女をみて、不安や寂しさが和らいでいった。

「今から買い物いきたいの。また今度じゃダメなの?」

今度だったら今のこの気持ちをもって彼女と向き合うことは出来ないだろうなと思いながら、買い物に付き合うよと答える。

コスメを買いに行くという彼女と、イセタンミラーに行った。

「ピンクで探してるの?たしかに赤よりもピンクって雰囲気だね」

「やっぱり?本当は赤も憧れるんだけど、似合うのはピンクかなーって?いつも結局買うのはピンクなの」

彼女が真剣にピンクの色味を選んでいる間に店に予約の電話をいれた。


寂しい男に付き合う女は寂しい女なのだろうか?
優しい女だとも思える。

互いが寂しさと退屈を紛らわせる為に生まれた出会いは、なんの必然性も無いが動物としてはとても自然な営みだと思う。