交差点とナンパ 1

仕事の移動中、大きな交差点での話。

信号待ちの中、日差しが強く僕は俯いていた。
ふと柔らかい香りがして、顔を上げると隣に女性がいた。
瞬間的に目が合う。

「あつい日、、ですね」

どちらかと言えば自然に漏れた言葉だった。
当然ガンシカ。しかし彼女は僕から視線を逸らしていない。
その視線のおかげで、スイッチが入る。

「失礼しました。暑くてボーッとしてたら自然に声が漏れてました。」

目をしっかりと見つめ、ゆっくりと話した。
彼女の表情は変わらない。

「そんな事ってないですか?」
 
「無いです。」
 
信号が変わる。平行トークスタート。
 
「今から○○方面で打合せで。。アナタはどちらまで?」
 
「会社に戻るんです」

「俺も時間ないからストレートに言うけど、アナタと知り合ってみたい。1分だけそこで話を聞いて」
 
ついてこない気がするが、力強く踏み込んで背を向けながら誘導した。
 
振り返ると彼女がいた。
 
「俺は(地名)で働いてるサラリーマン。たまたま目があって、うまく言えないけど素敵だと思った。どんな人なのか知ってみたいって」
 
彼女は人の目を見つめる癖がある。
自分に自信があるのだろう。
ただその視線は、初めから一貫して攻撃性は無い。
 
「別に絵画とか売りつけたり指輪を買ってくれとか言うつもりは無いんだけど、、、でもまぁいきなり言われたらビックリするよね。悪かったね。けど偶然だけどさ、こーやって話しかけなかったら俺らはきっと知り合うことは無いんだろなって、、」
 
「ナンパですか??」
それでも彼女の目に攻撃性は無い。
 
「そーいえばそーなるのかな?でも俺、お茶とか誘う時間無いしな。そーいうの欲しかった?」
 
「相手によりますね。別にお兄さんが良いとは言ってないですけど」
 
彼女は笑顔になったが、営業スマイルだ。
 
「どんな人ならナンパされてもいいのかな?随分と男を見る目があるみたいだけど」
 
えー と悪戯っぽく笑っている。
 
「それを確かめる為にも一度飲みにいこうよ。そこでナンパされてもいいかどうか判断したら?」
 
「それもうナンパ成功してるじゃないですか」
 
「バレた?」
 
初めて自然な笑いが起きた。
 
「時間作ってくれてありがとう。俺もう行かなくちゃ。飲みにいこうよ。君のこと知りたいんだ本気で。QRコード出して」
 
彼女はハイと言いながらラインの画面を出してきた。
 
「仕事は何時くらいに終わる?じゃーそれくらいに連絡するよ。またね」