交差点とナンパ2
彼女の仕事終わりの時間に連絡を入れた。
「お疲れ様。今電話出来る??」
彼女から電話がかかってきた。
「お疲れ様です。どうしたんですか?」
「いつ飲みに行くか決めようと思って。ところで今日はどんな一日だった?」
「いつもと変わらないですけど、あっ昼に変な人に声かけられました」
「イケメンに声かけられたの間違いでしょ。まだ○○?じゃー○○に来なよ。チーズが美味いイタリアンバルあるんよ。」
「えーどうしようかな?」
この声は俺の反応を見ているだけだ。
彼女は恐らくそこそこの男性経験があるのだろう。男のからかい方がうまい。
「心配しなくてもちゃんと薄暗くて口説くのにバッチリなバルだから安心して」
「それ余計に不安になるんですけど」
「でも口説くか決めるのはもっと知ってからだけどね」
「そんな事言われて口説かれなかったら私、惨めじゃないですか」
「今から出れる?8時に○○駅に集合ね」
仕事終わりの開放感からかテンポの良い会話が生まれ、笑いも出ている。
どちらかと言えば僕自身も純粋に会話を楽しんでいた。
駅前、約束の時間。
ここで想定外のことが発生。
彼女を見つけた直後、近くにいた男性が声かけ。
一瞬こちらを確認したあと、彼女は男性と話しだした。
完全に試されている。
しかしこのテストを超えない限り、今夜のゲットは無いだろう。
ナンパが終わるまで待つか?
何事も無かったように彼女の前に立ち連れていくか?
近くにいる女性に声をかけるか?
躊躇するな。
交差点とナンパ 1
信号待ちの中、日差しが強く僕は俯いていた。
ふと柔らかい香りがして、顔を上げると隣に女性がいた。
瞬間的に目が合う。
「あつい日、、ですね」
どちらかと言えば自然に漏れた言葉だった。
当然ガンシカ。しかし彼女は僕から視線を逸らしていない。
その視線のおかげで、スイッチが入る。
「失礼しました。暑くてボーッとしてたら自然に声が漏れてました。」
目をしっかりと見つめ、ゆっくりと話した。
彼女の表情は変わらない。
「そんな事ってないですか?」
「俺も時間ないからストレートに言うけど、アナタと知り合ってみたい。1分だけそこで話を聞いて」
即に逃げるな
自分への戒めとして記したい。
ナンパと恋愛と自分
今年に入るまで数年交際した彼女がいた。
交際中はナンパはしておらず、最近は徐々に復帰してしまっている。
正直ナンパは卒業したと思っていた。
数年前は成功する高揚感や受け入れて貰えた安心感が中毒になり、年に数十人という生活を送っていた。
だが自分自身が大人になり、それだけではないことが良く分かるようになってきた。
相手を楽しませて後悔させないのがPUAだと考える人もいるだろう。
しかし正しい判断と過程を踏んだとしても、一部の女性には辛い経験となるのだろう。
相手が自分に求めることを僕は叶えてあげられないことの方が多い。
交際することも結婚も。
あるいは交際も結婚も求めない女性は、短期的な身体の関係を僕に望んだと言える。
それはウィンウィンだと言えばそうなるが、僕自身が消費されてるとも言える。
感情を揺さぶり驚かせ楽しませ、誘惑し身体の関係を結ぶ。
それらはある意味女性に対するサービスだ。
彼女たちは僕自身のことでは無く、目の前でサービスを続ける遊び人としての僕に用事があるだけに過ぎない。
サービスを止めた途端、僕は不要な存在となる。
それは僕にとっては寂しいことだと思える。
そんな愚痴を垂れ流す僕だが、10代を含めてもナンパ以外で知り合った女性と交際した事が2度しかない。
恥ずかしながらナンパ以外で彼女を作る方法が分からない。
お盆休み ナンパ
所用が夕方で終わり、ナンパがしたくなった。
まだ明るい時間のナンパなんて数年ぶりだろう。
声を数件かけてみるも、うまくいかない。
人目が気になり怯えながら声をかけていた。
こんな時は下半身がフラフラになる。
逃げ込むようにカフェに入った。
座ったカウンター席の左隣は、垢抜けない感じの女の子。
中途半端に出した太ももを横目でみて、この子だったら何とかなるかな?なんてどーしようもない事が思い浮かんだ。
視線を店外に向けると、洗練された長身の女性が目に入った。
1/3しか飲んでいないラテを置いて、店を出る。
彼女が向かった先に視線を向けるが、見失った。
行き当たりばったりな感情に嫌気がさし周囲を見渡す。
斜め後ろから歩いていた彼女と目があった。
ぐっと左足を踏み込む。
「あのっ」
足は止まったが、次の言葉は出てこない。
彼女だけでは無く、僕も首を傾げてしまった。
「急に予定があいちゃって、良ければ軽く夕飯でもどう?」
自分でもビックリする程、旧世代なナンパ文句が出てきた。
彼女はややゆっくり歩みはじめた。
「いきなりゴメン。でもお盆の夜にこのまま帰るなんて辛くない?これから予定あるの?」
相変わらず返事は無いが、また足を止めてくれた。
「軽くイタリアンあたりでどうかな?居酒屋って気分でも無いよね」
行くって言ってないと彼女は笑いながら口を開いた。
「そうなんだけど、こんな事ってない?知らない人に声をかけるとかじゃなくて、急に予定を失ってさ。なんだかそのまま帰れる気分じゃないって」
「分かりますけど別に私じゃなくて良くないですか?」
至極真っ当な答えに思わず同意してしまった。
「ほら他の人でもいいんじゃないんですか」
彼女の表情は少しづつ和らいできている。
「でも違うかな。やっぱり貴方がいい。笑顔が柔らかいから。エクボできてるし。エクボある子とイタリアって気分になってきた」
自分だってエクボある癖にと笑った彼女をみて、不安や寂しさが和らいでいった。
「今から買い物いきたいの。また今度じゃダメなの?」
今度だったら今のこの気持ちをもって彼女と向き合うことは出来ないだろうなと思いながら、買い物に付き合うよと答える。
コスメを買いに行くという彼女と、イセタンミラーに行った。
「ピンクで探してるの?たしかに赤よりもピンクって雰囲気だね」
「やっぱり?本当は赤も憧れるんだけど、似合うのはピンクかなーって?いつも結局買うのはピンクなの」
彼女が真剣にピンクの色味を選んでいる間に店に予約の電話をいれた。
寂しい男に付き合う女は寂しい女なのだろうか?
優しい女だとも思える。
互いが寂しさと退屈を紛らわせる為に生まれた出会いは、なんの必然性も無いが動物としてはとても自然な営みだと思う。